キッチンの高さ85cmは後悔する?設計士が教える正しい決め方と注意点

キッチンの高さ85cmは後悔する?設計士が教える正しい決め方と注意点
  • キッチンの高さ85cmで後悔する最大の理由は「海外製食洗機が入らない」こと──設計士が100棟の経験から解説
  • 「身長÷2+5cm」の公式はほぼ正しい。ただし厚手のスリッパを履くなら+5cmの調整が必要
  • 85cmか90cmで迷ったら高い方を選ぶべき──低いキッチンは腰痛の原因になりやすい

「キッチンの高さを85cmにしたけど、これで良かったのかな…」──新築やリフォームでキッチンの高さを決めた後に、こうした不安を感じる方は少なくありません。SNSや口コミサイトでは「85cmは低すぎた」「90cmにすればよかった」という声もあれば、「85cmでちょうどいい」という声もあり、結局どちらが正解なのかわからなくなります。

この記事の執筆・監修は、ぶっちゃけハウジング代表の増田圭太です。建築士として100棟以上の住宅設計に携わり、キッチンの高さで後悔した施主も、満足した施主も見てきました。設計士の立場から「キッチンの高さ85cmは後悔するのか?」を本音でお伝えします。

目次

キッチンの高さ85cmで後悔する最大の理由

キッチンの高さ85cmで後悔する最大の理由

結論から言います。キッチンの高さ85cmで最も後悔するケースは、身長が合わないことではありません。

「海外製の食洗機が入らない」──これが、設計士として100棟以上を見てきた中で最も多い後悔ポイントです。

ミーレ(Miele)やボッシュ(Bosch)、ガゲナウ(Gaggenau)といった海外製のビルトイン食洗機は、キッチンの高さが90cm以上ないと設置できません。海外製食洗機は国産品と比べて庫内が大きく、フロントオープンで出し入れしやすいため、近年人気が急上昇しています。

「今は食洗機にこだわらない」と思っていても、10年後にキッチンをリフォームする時に「やっぱりミーレにしたい」と思うかもしれません。その時にキッチンの高さが85cmだと、海外製食洗機は物理的に入らない。キッチンごと交換する大がかりなリフォームが必要になります。

増田 圭太

将来の選択肢を残すという意味でも、90cmを検討する価値はあります。

「身長÷2+5cm」の公式は正しいのか?

「身長÷2+5cm」の公式は正しいのか?

キッチンの高さを決める際によく使われるのが、「身長÷2+5cm」の公式です。

スクロールできます
身長公式の結果推奨されるキッチン高さ
150cm80cm80cm
155cm82.5cm80cm or 85cm
160cm85cm85cm
165cm87.5cm85cm or 90cm
170cm90cm90cm

設計士としての本音を言えば、この公式はほぼ正しいです。100棟以上の設計経験からも、この公式で算出した高さで問題になったケースはほとんどありません。

ただし1点だけ注意があります。

厚手のスリッパを履くなら+5cmする

自宅でスリッパを履く方は、スリッパの厚み分だけ身長が高くなることを忘れがちです。一般的なスリッパの厚みは1〜2cm程度ですが、厚底タイプやルームシューズだと3〜5cmになることもあります。

たとえば身長160cmの方が、厚さ3cmのスリッパを履くと実質163cm。公式に当てはめると86.5cm。この場合、85cmよりも90cmの方が合う可能性があります。

ショールームでキッチンの高さを確認する際は、自宅で普段履いているスリッパを持参してください。ヒールのある靴やスリッパなしの状態で試すと、実際の使用感と大きくズレます。

85cmか90cmで迷ったら、高い方を選ぶ

「身長的にはどちらでもいけそう」──85cmと90cmで迷った場合は、高い方を選ぶことをおすすめします。理由は2つです。

理由①:低いキッチンは腰痛の原因になりやすい

キッチンが低すぎると、調理中に前かがみの姿勢が続きます。毎日1〜2時間この姿勢を取り続けると、慢性的な腰痛の原因になります。

高すぎるキッチンは「肩が上がって疲れる」というデメリットがありますが、5cm程度の差であれば肩への負担は限定的です。一方、低いキッチンによる腰痛は日常生活に支障をきたすレベルになることもあり、影響は大きい。

理由②:高い方はスリッパやマットで調整できる

キッチンが少し高いと感じた場合、厚底のスリッパやキッチンマットで1〜3cm程度は調整できます。しかし、キッチンが低すぎた場合に自分の身長を低くすることはできません。

つまり、高い方はあとから調整がきくが、低い方はどうにもならないのです。

キッチンの高さで見落としがちなポイント

キッチンの高さで見落としがちなポイント

ガスコンロとIHで「実際の作業面」が変わる

見落としがちなのが、コンロの種類によって実際の作業面の高さが変わることです。

スクロールできます
コンロの種類天板からの高さキッチン85cmの場合の実際の調理面
IHクッキングヒーターほぼ0cm(フラット)約85cm(天板とほぼ同じ)
ガスコンロ(ゴトク付き)約4〜5cm約89〜90cm(ゴトクの上に鍋を置く)

ガスコンロの場合、ゴトク(五徳)の高さ約4〜5cmが加わるため、鍋やフライパンの底面は天板より4〜5cm高い位置になります。つまりキッチンの高さが85cmでも、ガスコンロで調理する際の実質的な高さは89〜90cmです。

IHの場合はフラットなので、天板の高さがそのまま調理面の高さになります。同じ「85cm」でも、ガスとIHでは使用感が異なることを覚えておいてください。

まな板の厚みも計算に入れる

包丁を使う作業では、まな板の厚みも影響します。一般的なまな板の厚みは1〜3cm。厚みのある木製まな板を使う場合、キッチン85cm+まな板3cm=88cmが実際の包丁作業の高さになります。

海外製食洗機を入れたいなら90cm以上が必須

先述の通り、ミーレやボッシュ等の海外製ビルトイン食洗機はキッチン高さ90cm以上が必要です。「今は国産の食洗機でいい」と思っていても、将来リフォームで海外製に変えたくなった時に85cmだと設置できません。

海外製食洗機を少しでも検討しているなら、迷わず90cmを選んでください。

キッチンの高さの正しい決め方

ここまでの内容を踏まえて、キッチンの高さを後悔せずに決めるための手順をまとめます。

STEP
公式で目安を出す

身長÷2+5cmで算出。80cm・85cm・90cmのうち最も近い高さが基本の候補です。

STEP
スリッパの厚みを加算する

自宅で履いているスリッパの厚みを測り、身長に加算してから公式に当てはめてください。厚底スリッパなら+3〜5cm。

STEP
ショールームで必ず体験する

自宅で使っているスリッパを持参し、実際にショールームで複数の高さを体験してください。包丁で切る動作、鍋を振る動作、シンクで洗い物をする動作──全てを試してみることが重要です。

STEP
迷ったら高い方を選ぶ

85cmと90cmで迷ったら、高い方を選んでください。高い方はスリッパやマットで調整できますが、低い方はどうにもなりません。

STEP
海外製食洗機の予定があるか確認する

ミーレやボッシュ等の海外製食洗機を入れたい(将来的にも)場合は、90cm以上を選んでください。85cmでは物理的に設置できません。

キッチンの高さでよくある質問

身長160cmですが、85cmと90cmどちらがいいですか?

公式(160÷2+5=85cm)では85cmが目安です。厚手のスリッパを履かず、海外製食洗機も不要であれば85cmで問題ありません。ただし、厚底スリッパを常用するなら90cm、海外製食洗機を検討しているなら90cmを選んでください。迷ったら高い方が安全です。

キッチンの高さは後から変えられますか?

システムキッチンの場合、台輪(足元部分)の高さを調整することで数cmの変更は可能な場合があります。ただし、85cm→90cmのような大幅な変更はキッチン本体の交換が必要になり、費用は数十万〜100万円以上かかります。最初の段階で慎重に決めることが最も経済的です。

夫婦で身長差がある場合、どちらに合わせるべきですか?

メインでキッチンに立つ人の身長に合わせてください。夫婦で均等に使う場合は、身長が高い方に合わせ、低い方はスリッパやキッチンマットで調整するのが現実的です。低い方に合わせてしまうと、高い方が腰痛になるリスクがあります。

85cmのキッチンで海外製食洗機を使う方法はありますか?

ビルトインタイプは物理的に入りません。どうしても使いたい場合は、卓上型の食洗機を別途設置するか、キッチンをリフォームして90cm以上に変更する必要があります。

まとめ──キッチンの高さは「5cmの差」で10年の満足度が変わる

キッチンの高さ85cmは、身長160cm前後の方にとっては標準的な高さであり、多くの場合は後悔しません。ただし、以下の3点に該当する方は90cmを選んだ方が満足度が高くなります。

①厚底のスリッパを常用する方──実質身長が3〜5cm高くなるため、85cmでは低く感じる可能性があります。

②海外製食洗機(ミーレ・ボッシュ等)を入れたい方──85cmでは物理的に設置できません。将来の検討も含め、少しでも可能性があるなら90cm一択です。

③85cmか90cmで迷っている方──迷ったら高い方を選んでください。高い方はスリッパやマットで調整できますが、低い方は対処法がありません。

キッチンは10年以上使い続けるものです。5cmの差が、10年間の毎日の料理体験を左右します。「なんとなく85cm」ではなく、自分の生活スタイルに合った高さを慎重に選んでください。

代表設計士増田圭太の写真

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この記事を書いた人

香川県出身。地元・高松市の家づくりを熟知。
慶應義塾大学(数学専攻)卒業後、構造設計士の父の影響で建築の道へ。
住宅を中心に100棟以上の設計経験を持つ。
設計だけでなく住宅販売の経験も豊富で、施主が抱える悩みと住宅会社側の事情の両方を深く理解しているのが強み。

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