- キッチンの通路幅は「80cmか100cmの二択」──設計士が100棟の経験から出した結論
- 90cmは中途半端。1人で使うなら80cm、2人で使うなら100cm。使い方で自動的に決まる
- 通路幅100cmなら、フロントオープンの海外製食洗機を正面から使える
「キッチンの通路幅、90cmにしたけど狭い?」「80cmと90cmで迷っている」──キッチンの通路幅は、ネットで調べるほど迷子になるテーマの1つです。「1人なら80〜90cm」「2人なら100〜120cm」と幅を持たせた回答が多く、結局どうすればいいのかわからなくなります。
この記事の執筆・監修は、ぶっちゃけハウジング代表の増田圭太です。建築士として100棟以上の住宅設計に携わる中で、キッチンの通路幅で後悔した施主も、満足した施主も見てきました。設計士の経験から、通路幅の「正解」を本音でお伝えします。
キッチンの通路幅90cmは狭い?設計士の結論は「80cmか100cmの二択」

結論から言います。キッチンの通路幅90cmは中途半端です。設計士としての答えは「80cmか100cm」の二択。
| 使い方 | 通路幅 | 理由 |
|---|---|---|
| 同時に1人しか立たない | 80cm | 1人で調理するなら80cmで十分。その分リビングやダイニングを広く取れる |
| 2人で同時に立つ | 100cm | 2人がすれ違える+フロントオープンの食洗機を正面から使える幅 |
ネットでは「1人なら80〜90cm」「2人なら100〜120cm」と幅を持たせた情報が多いですが、設計士としての実務では、80cmか100cmかのどちらかしか採用しません。85cmや90cmは中途半端で、メリットがどちらにも寄らないからです。
判断基準は「同時に何人がキッチンに立つか」──これだけです。使い方を聞けば、通路幅は自動的に決まります。
キッチン通路幅の比較一覧──70cm〜120cmでどう変わるか
まず、通路幅ごとの使用感を一覧で把握してください。
| 通路幅 | 使用感 | おすすめの人 |
|---|---|---|
| 70cm以下 | 1人でも窮屈。引き出しを開けるたびに身体をずらす必要あり | おすすめしない |
| 80cm | 1人なら快適。引き出しは横にずれて開ける。背面収納に手が届きやすい | 1人で使う方(設計士推奨) |
| 85cm | 1人には十分だが2人だと苦労する。中途半端 | ── |
| 90cm | 1人にはやや広すぎ、2人にはやや狭すぎる。フロントオープン食洗機が正面から使えない | ── |
| 100cm | 2人がすれ違える。フロントオープン食洗機を正面から使える。引き出し全開でも通れる | 2人で使う方(設計士推奨) |
| 110〜120cm | 非常にゆったり。ただし振り返って背面収納に手が届かない可能性あり | 3人以上で使う方・車椅子利用 |
この表を見ると、80cmと100cmが「ちょうどいい」ゾーンに入ることがわかります。85cmと90cmはどちらの使い方にも中途半端で、明確なメリットがありません。
ちなみに70cm以下は建売住宅や古いマンションで見かけることがありますが、新築の注文住宅で設計することはまずありません。逆に120cm以上は、ホームパーティーが趣味の方や、介護でキッチンに車椅子が入る必要がある場合を除き、一般的な家庭にはオーバースペックです。
キッチンの通路幅90cmが中途半端な理由
「90cmが標準」と書いているサイトが多いですが、設計士の立場から言えば、90cmは「1人にはやや広すぎ、2人にはやや狭すぎる」中途半端な幅です。
1人で使うなら──90cmは「もったいない」
同時に1人しかキッチンに立たないのであれば、80cmで十分に調理できます。80cmと90cmの差は10cm。たった10cmですが、その10cmをリビングやダイニングに回せば、ソファのサイズを1つ上げられたり、ダイニングテーブルの配置に余裕が生まれたりします。
限られた間取りの中で、使わない10cmをキッチンに取られるのはもったいないのです。
「10cmなんて大した差じゃない」と思うかもしれませんが、間取り全体で考えると10cmの積み重ねは大きい。キッチン通路で10cm、廊下で5cm、玄関ホールで5cm──こうした「なんとなく余裕を持たせた」スペースが合計30〜40cmになり、それだけリビングが狭くなっているケースを設計士として何度も見てきました。
2人で使うなら──90cmは「足りない」
実際に85cmの通路幅で2人がキッチンに立っている施主から、「苦労している」という声をいただいたことがあります。90cmでも2人がすれ違う時に身体を横にする必要があり、調理中にストレスを感じます。
さらに、90cmではフロントオープン型の食洗機(ミーレ・ボッシュ等)を開けた状態で、正面に立つことができません。扉を開けたら通路がほぼ塞がれるため、食器の出し入れのたびに横にずれる必要があります。
2人で使うなら、中途半端な90cmではなく100cmを確保してください。
通路幅100cmで得られるメリット
100cmの通路幅を確保すると、以下の使い方が快適になります。
①2人が無理なくすれ違える
100cmあれば、2人がキッチンで同時に作業していても、身体を横にせずにすれ違えます。「ちょっとごめん」と言いながら身体を細くする──あの小さなストレスが毎日なくなります。
②フロントオープンの食洗機を正面から使える

ミーレやボッシュなどの海外製ビルトイン食洗機はフロントオープン式で、扉を手前に倒して食器を出し入れします。この扉を全開にした状態で、正面に立って食器を出し入れできるのが100cmです。
90cmだと扉を開けたら通路のほとんどが塞がれ、横から手を伸ばして食器を出し入れすることになります。フロントオープンの食洗機を採用するなら、通路幅100cmは必須と考えてください。
③引き出し収納を全開にしても通れる

キッチンの引き出し収納は奥行き50〜60cm。90cmの通路幅で引き出しを全開にすると、残りは30〜40cm。人が横を通るには窮屈です。100cmなら引き出しを全開にしても40〜50cmの通路が残り、横を通ることができます。
毎日何十回と開け閉めするキッチンの引き出し。そのたびに「身体を横にずらす→引き出しを開ける→物を取る→引き出しを閉める→元の位置に戻る」を繰り返すのは、想像以上にストレスです。100cmなら引き出しを開けたまま横を通り抜けられるため、この動作が丸ごとなくなります。
キッチンのタイプ別──通路幅の考え方

キッチンのレイアウトによって、通路幅の重要度は変わります。
| キッチンタイプ | 通路幅の考え方 | 推奨幅 |
|---|---|---|
| I型(壁付け) | 背面に大型収納を置かないケースが多い。通路幅の問題が起きにくい | 80cm〜 |
| 対面キッチン(ペニンシュラ) | 背面に食器棚・家電・冷蔵庫を並べる。引き出しの開閉スペースが重要 | 1人:80cm / 2人:100cm |
| アイランドキッチン | 両側に通路がある。片側100cm+もう片側80cm程度が一般的 | 100cm〜 |
| Ⅱ型(セパレート) | シンクとコンロが対面。2人での作業が前提のレイアウト | 100cm〜 |
最も注意が必要なのは対面キッチンです。背面に食器棚や冷蔵庫を配置するため、引き出しの開閉・冷蔵庫のドアの開閉・人のすれ違いが同じ通路で発生します。対面キッチンで2人が使うなら、100cmは確保してください。
I型の壁付けキッチンは、背面がダイニングテーブルになることが多く、大型の食器棚を置かないケースが一般的です。この場合は通路幅の問題自体が発生しにくいため、80cmでも快適に使えます。
アイランドキッチンは両側に通路があるため、片側100cm+もう片側80cm程度が一般的。開放感があるためLDKの広さとのバランスを優先し、メインの通路側(背面収納がある側)を100cm確保するのが設計のセオリーです。
通路幅80cmでも快適に使うための条件
「うちは1人しかキッチンに立たないから80cmでいい」という方もいるでしょう。80cmで快適に使うための条件を整理します。
条件①:背面収納の奥行きに注意
80cmの通路幅は、キッチン本体と背面収納の間の距離です。背面収納の奥行きが標準の45cmであれば問題ありませんが、奥行き65cmの大型カップボードを置くと、実質的な通路が予定より狭くなることがあります。背面に何を置くか決めてから、通路幅を最終確定してください。
条件②:冷蔵庫の奥行きを計算に入れる

キッチンの通路幅で最も見落とされるのが冷蔵庫です。一般的な冷蔵庫の奥行きは約70cm。背面収納の奥行き(45cm)より25cmほど飛び出します。さらに放熱のために壁から3cm程度離す必要があるため、実質73cm。
たとえば通路幅90cmのキッチンで、背面に冷蔵庫を置くと、冷蔵庫の前の通路は90cm−73cm=約17cm。人が横を通ることすら困難です。
冷蔵庫を背面に配置する場合は、冷蔵庫の前の通路幅が最低70cm以上になるよう計算してください。80cmの通路幅なら冷蔵庫の配置を端にする、100cmの通路幅なら冷蔵庫がどこにあっても問題ない──これも「80cmか100cmの二択」が正解になる理由の1つです。
条件③:引き出しは横にずれて開ける前提
80cmの通路で引き出しを全開にすると、通路は20〜30cmしか残りません。引き出しを開ける時は、身体を横にずらして脇に立つ動作が必要です。これを「面倒だ」と感じる方は、100cmを検討してください。
通路幅の「測り方」に注意──実際はもっと狭い?

通路幅を確認する際、どこからどこまでを測るかで数字が変わることをご存知ですか?
キッチン本体と背面収納には、それぞれ足元に「蹴込み」と呼ばれる5cm程度の凹みがあります。図面上の通路幅はこの蹴込みを含んだ数字になっていることが多いのですが、実際に立って作業する時の体感は、蹴込みを除いた幅です。
| 図面上の数値 | 体感の数値 | |
|---|---|---|
| 蹴込みを含む(壁芯〜壁芯) | 100cm | ── |
| 蹴込みを除く(天板〜天板) | ── | 約90cm |
つまり、図面上で「通路幅100cm」と書いてあっても、天板の間は90cm程度しかないケースがあります。設計図で通路幅を確認する際は、「天板から天板の距離ですか?」と必ず確認してください。
ショールームで体感する際も同様です。蹴込みの凹みがあるため、足元は広く感じますが、腰の高さで測ると想像より狭いことがあります。
設計図を確認する際のチェックポイントは、「キッチン天板の端から背面収納の天板の端までの距離」です。これが80cmなのか100cmなのかを確認してください。壁芯の距離ではなく、天板同士の距離──これが実際に体感する通路幅です。
通路幅を先に決めて、残りでLDKを考える
「通路幅を広くするとリビングが狭くなる」──これは多くの方が心配するポイントです。設計士としてのアプローチをお伝えします。
通路幅は先に決めてください。80cmなら80cm、100cmなら100cm。「使い方」で自動的に決まるので、迷う余地はありません。
通路幅を確定させたら、残ったスペースでリビング・ダイニングの広さを最大化する間取りを考えます。通路幅80cmを選んだ場合、100cmと比べて10cm分がリビングやダイニングに回せます。この10cmが家具の配置やテーブルのサイズ選びに効いてきます。
「LDKを広くしたいから通路幅を犠牲にする」ではなく、「通路幅を決めてからLDKの間取りを工夫する」──この順番が正しいアプローチです。通路幅は後から変えられませんが、LDKの使い方は家具の配置で調整できます。
実際の設計では、「通路幅を80cmにしたことで、ダイニングテーブルを6人掛けから4人掛けに変える必要がなくなった」「通路幅100cmにしたが、LDKの形を長方形から正方形に変えることで広さを感じられる間取りにできた」──こうした工夫の積み重ねで、キッチンもLDKも両立させることができます。
通路幅を決める前にやるべきこと
通路幅を「80cmか100cm」で決める前に、以下の3つを確認してください。
①キッチンに同時に立つ人数を家族で話し合う
「普段は1人で料理するけど、週末は夫婦で一緒に作る」「子供が大きくなったら一緒に料理したい」──今だけでなく、5年後・10年後の使い方もイメージしてください。「今は1人だけど将来は2人になる可能性がある」なら100cmを選んでおくのが安全です。通路幅は後から広げるのが最も難しい部分だからです。
②背面に置く家具・家電のリストと奥行きを確認する
背面に置くものの奥行きによって、実際の通路幅が変わります。以下を事前にリストアップしてください。
| 背面に置くもの | 奥行きの目安 |
|---|---|
| 食器棚(標準) | 45cm |
| カップボード(大型) | 50〜65cm |
| 冷蔵庫 | 70cm+放熱3cm=73cm |
| 電子レンジ台 | 45〜55cm |
| ゴミ箱スペース | 30〜40cm |
最も奥行きがあるのは冷蔵庫(73cm)。冷蔵庫の配置場所を先に決め、その前の通路が最低70cm以上あるかを確認してください。
③ショールームで実際に体感する
数字だけでは通路幅の感覚はわかりません。必ずショールームで体感してください。その際、普段キッチンで使っているスリッパを持参すること、2人で使う予定なら2人で行くこと、この2点を守ってください。1人で見に行って「90cmで大丈夫そう」と判断し、実際に住み始めたら2人で使うことが多く「狭い」と感じるケースは非常に多いです。
キッチンの通路幅でよくある質問
通路幅90cmで新築を建ててしまいました。狭いですか?
1人で使う分には問題ありません。90cmあれば1人での調理は十分快適です。2人で同時に使う場合はやや狭いですが、「片方がコンロ側、もう片方がシンク側」と持ち場を分ければ、すれ違いの頻度を減らせます。90cmは「使えない幅」ではなく「工夫すれば使える幅」です。
通路幅は後から広げられますか?
キッチン本体を入れ替えるか、背面収納を奥行きの浅いものに交換すれば、通路幅を広げることは可能です。ただし、キッチン本体の入れ替えは100万円以上かかるのが一般的。新築時に正しい通路幅を選ぶことが最も経済的です。
120cmにするとどうなりますか?
120cmは2人での作業には非常に快適ですが、振り返って背面収納に手が届かなくなる可能性があります。特に小柄な方は、120cmだと背面の棚に手を伸ばすのに1〜2歩移動する必要が出てきます。「広すぎて動線が長くなる」というデメリットが発生するため、特別な理由がなければ100cmで十分です。
対面キッチンとI型キッチンで最適な通路幅は違いますか?
基本的な考え方は同じで「1人なら80cm、2人なら100cm」です。ただし、I型キッチンは壁付けのため背面に大きなカップボードを置かないケースが多く、90cmでも十分な場合があります。対面キッチンは背面に食器棚や家電を並べることが多いため、引き出しの開閉スペースも考慮して100cmを確保するのがおすすめです。
通路幅を決める時に、最も重要な確認ポイントは何ですか?
「同時にキッチンに立つのは何人か」──これだけです。1人なら80cm、2人なら100cm。体格や身長による微調整は不要です。この二択で決めれば、後悔することはほぼありません。
子供と一緒に料理する場合の通路幅は?
お子さんと一緒に料理する場合は100cmを推奨します。子供は予測できない動きをするため、大人同士よりも余裕が必要です。将来的にお子さんと一緒に料理を楽しみたいと考えているなら、今は1人で使っていても100cmを選んでおいてください。
カップボードの引き出しを開けた時のスペースも考慮すべき?
はい。背面カップボードの引き出しの奥行きは通常40〜50cm。80cmの通路で引き出しを全開にすると、残りは30〜40cm。1人なら横にずれて対応できますが、2人いると身動きが取れなくなります。カップボードの引き出しを開けた状態でも余裕がある幅を確保するなら、やはり100cmが安心です。
まとめ──キッチンの通路幅は「80cm or 100cm」で迷わない
キッチンの通路幅は、ネットで調べるほど情報が多くて混乱しがちです。「80〜90cmが標準」「100〜120cmがおすすめ」「90cmだと狭い?」──どこを見ても幅を持たせた回答ばかり。
設計士としての答えはシンプルです。同時に1人なら80cm、2人なら100cm。この二択で自動的に決まります。
90cmは1人にはやや広すぎ、2人にはやや狭すぎる中途半端な幅。85cmでは2人での作業に苦労し、フロントオープンの食洗機も正面から使えない。だから「80cmか100cmの二択」なのです。
通路幅を先に決めて、残りでLDKの広さを最大化する。この順番で間取りを考えれば、キッチンもLDKも後悔のない空間になります。

「通路幅を含めた間取り全体をプロにチェックしてほしい」という方は、ぶっちゃけハウジングの間取り添削サービスをご活用ください。設計士が間取り全体のバランスを確認し、改善点を提案します。
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