30坪・二階建ての間取りで二世帯住宅を実現!設計士が添削した成功事例

30坪・二階建ての間取りで二世帯住宅を実現!設計士が添削した成功事例

30坪で来客が泊まれて、将来は二世帯——。普通に考えるとかなり難しい条件です。しかし「全部を広くする」のではなく「面積の使い方の優先順位を入れ替える」ことで、今も暮らしやすく将来にも対応しやすい家は実現できます。

増田 圭太

本記事では、実際にご依頼いただいた30坪の間取りを、設計実績100棟以上の現役設計士が添削した事例を紹介します。LDK・和室・脱衣所の3つをどう見直したのか、ビフォーアフターの図面付きで解説します。

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目次

今回の間取りの前提条件(30坪で来客が泊まれて、将来は二世帯住宅)

ご依頼いただいたタイミングではご夫婦とお子様1人の3人家族。ただし将来的にお子様をもう1人考えており、さらに親御さんとの同居の可能性もあるため、完全分離ではなくても二世帯住宅的な使い方ができる余地を持たせたいという条件でした。

加えて、来客が泊まりに来ることが多いため客間も必要。つまり今回は「今ちょうどいい家」ではなく、「今も使いやすくて、将来にも対応しやすい家」にする必要がありました。

住宅会社との予算の関係上、全体の面積は大きく変えずに改善案を提案しています。

元の間取りの良いところ

30坪で二世帯住宅間取りビフォー
添削前の間取り図(1階・2階)

まず、元の図面の良いところから見ていきます。住宅会社の設計にもしっかりとした工夫が見られました。

① 無駄な廊下が少なくコンパクト

30坪という限られた面積の中で、無駄な廊下をかなり減らしてコンパクトにまとめられています。1階の廊下と2階の廊下はそれぞれ1畳弱程度。30坪前後の家は廊下が多いと一気に狭く感じてしまうので、ここまで効率的に設計されているのはかなり優秀です。

② 総二階に近い形で構造的に有利

1階と2階の外壁ラインがほぼ揃っている総二階に近い形状です。構造的に素直な形なので耐震面で有利になり、外形がシンプルなぶん施工しやすくコストも抑えられます。見た目も大事ですが、コストと耐震性のバランスという点で非常に現実的な間取りでした。

③ 洗面室と脱衣所が分離されている

浴室隣の水回りで、洗面室とランドリースペースが扉で区切られています。誰かがお風呂に入っていても手を洗える設計は、最近よくご提案する間取りの工夫です。元の図面のベースはかなり良いと感じました。

元の間取りで気になった3つのポイント

ベースが良い間取りではあったものの、「今の暮らしやすさ」と「将来の対応力」の両立を考えると、3つの課題がありました。

① LDKの通路計画

図面上では15畳あるLDK。一見問題なさそうに見えますが、注意が必要です。

現在の図面にあるダイニングテーブルは4人掛けで横幅約1m20cm。将来的に二世帯で6人掛けのテーブルに変えると横幅は約1m80cmになり、人が通る通路がほとんど残せません。ソファも2m程度の大きなものを置くと、キッチンへの動線もリビングへの動線もすべて通りにくくなります。

② 和室の形と将来の使い方

和室は4畳ありますが、細長い形状です。将来的に親御さんの部屋として使う可能性を考えると、この形状はかなり使いにくい。寝る方向が縦方向に限定されてしまい、日常的に居室として使うには窮屈です。

来客が泊まるだけの和室ならまだしも、お母さんが普段から使う部屋にするなら、正方形に近い形の方が圧倒的に使いやすくなります。

③ 脱衣所の広さと家事スペース

今回のご要望にはスロップシンクの設置がありましたが、脱衣所は1.5畳しかなく、洗濯機とちょっとした収納を置くとスロップシンクを置くスペースがありません。

脱衣所は理想の広さが分かりにくい場所ですが、洗濯機・乾燥機を置いて、洗濯物を畳んだり、タオルや肌着を収納したりするスペースまで考慮すると、想像以上に面積が必要です。経験上、3畳は必要だと考えています。

改善した間取りのビフォーアフター

30坪で二世帯住宅間取りアフター
添削後の間取り図(1階・2階)

住宅会社との予算関係上、全体の面積は大きく変えずに3つの改善を行いました。変更点を一覧で比較します。

項目添削前添削後変更理由
キッチンアイランドキッチン壁付けキッチン+パントリーLDK全体に余白を確保するため
和室細長い4畳正方形に近い4.5畳将来の居室利用に対応するため
脱衣所1.5畳3畳スロップシンク+収納+回遊動線の確保
客間2階の洋室(5.5畳)2階に3畳の客間を新設必要十分なサイズに。余った面積を他の部屋・収納に
トイレ位置階段から約5m階段降りてすぐ2階にトイレがないため夜間の利便性を改善

改善①:アイランドキッチンを壁付けキッチンに変更

「え、アイランドをやめるの?」と思われるかもしれません。しかし正直なところ、元の15畳の広さで無理にアイランドキッチンにすると、どう家具を配置しても狭い場所が出てしまいます。

アイランドキッチンは見た目がかっこよく憧れる方も多い設備です。ただし毎日使う場所として考えると、通路が狭くなるストレスの方が大きい。今回は潔く壁付けキッチンに変更し、LDK全体に余白を残す方を優先しました。

キッチン周りの収納が少なくなるぶん、横にパントリーを設けて収納量を補填しています。設備単体の憧れを取るか、空間全体の使いやすさを取るか。予算を抑えながら建てるなら、こうした割り切りもすごく大事だと考えています。

改善②:細長い和室4畳を正方形の4.5畳に変更

元の細長い4畳の和室を、正方形に近い4.5畳の和室に変更しました。これによって将来的に親御さんの部屋として使うときもかなり住みやすくなっています。

最初から完全な二世帯住宅にしなくても、こうした準備があるだけで将来の選択肢が大きく広がります。収納が必要であれば1畳分の吊り収納を設けることで、布団を差し込んで寝ることもできます。正方形の部屋にプラス収納をつけた和室の作り方が、今回のベストな解決策でした。

改善③:脱衣所を1.5畳から3畳へ拡張

脱衣所を倍の面積に拡張しました。3畳にすることで洗濯機・スロップシンク・肌着や収納スペースに加えて、人が歩く動線もしっかり確保できています。

さらにリビング側と廊下側の2つにドアを設けているため、回遊動線としても使いやすい設計になっています。

その他の間取り調整ポイント

トイレを階段のすぐ近くに移動

今回の間取りは2階にトイレがありません。夜中にトイレに行くには1階に降りる必要がありますが、元の間取りでは階段からトイレまで約5mの暗い廊下を歩く必要がありました。改善後は階段を降りてすぐの位置にトイレを配置し、夜間のストレスを大幅に軽減しています。

客間を必要十分なサイズに調整

来客が泊まりに来ることが多いという前提ですが、来客は1人が多く、広く取りすぎたくないというご意向がありました。そこで客間は1人分で十分な3畳に調整し、余った面積を居室やウォークインクローゼット、階下の収納に振り分けています。

たまにしか使わない場所を大きく取りすぎるよりも、収納や普段の生活スペースを広くした方が暮らしやすさは確実に上がります。

外観のビフォーアフター

添削前の外観

30坪で二世帯住宅間取りの二階建て外観ビフォー
添削前の外観:総二階に近い箱型の形状。のっぺりした印象になりやすい

元の図面は総二階に近い外観でした。構造的にはメリットがある形状ですが、どうしてものっぺりとした印象になりがちです。

添削後の外観

30坪で二世帯住宅間取りの二階建て外観アフター
添削後の外観:グレー調の塗り壁でモダンに。1階と2階に奥行きの差をつけて立体感を演出

改善後は1階部分よりも2階部分を少し奥に引っ込ませる形にし、全体をグレー調の塗り壁・吹き付け調の仕上げに変更しています。奥行きのある形状にすることで立体感が生まれ、よりモダンな外観になりました。玄関前を少し広めに取ることで、自転車を置くスペースも確保しています。

なお、1階の大きな掃き出し窓は直射日光がかなり入る可能性があるため、実際にはデザインと機能の両面から庇(ひさし)の追加も検討すべきポイントです。

まとめ:大事なのは「優先順位の入れ替え」

今回の添削で一番大事にしたのは、30坪の中で全部を広くするのではなく、将来のことや毎日の使いやすさに合わせて面積の使い方の優先順位を入れ替えることです。

  • アイランドキッチンの憧れよりも、LDK全体の余白を優先
  • 細長い和室よりも、将来の居室にもなる正方形の和室を優先
  • 狭い脱衣所よりも、家事と収納が完結する3畳のランドリースペースを優先

さらに将来的に親御さんとの同居の可能性がある場合は、今だけ考えるのではなく後から対応しやすい設計にしておくことが重要です。100点満点の間取りはどの家族にも存在しません。それぞれのご家族のライフスタイルに合わせて、最適な間取りを提案するために設計士はいます。

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この記事を書いた人

香川県出身。地元・高松市の家づくりを熟知。
慶應義塾大学(数学専攻)卒業後、構造設計士の父の影響で建築の道へ。
住宅を中心に100棟以上の設計経験を持つ。
設計だけでなく住宅販売の経験も豊富で、施主が抱える悩みと住宅会社側の事情の両方を深く理解しているのが強み。

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